活動報告:2023年12月度定例会

「AIは地域を救う?」を稲垣秀行会員よりご講演を頂きました。稲垣会員は富士ゼロックス在籍時に中小企業診断士に合格され、その後独立、現在は地域活性化、スポーツ、ITの3軸でいろいろな課題に取り組んで見えます。

 

講演内容

稲垣会員プレゼンテーション

本日のテーマは、AIカメラを活用した商店街振興の取り組み事例です。中小企業診断士2次試験の事例Ⅱでは過去16年に8回商店街について出題されているほど中小企業診断士としては身近な課題です。

Intelligence Design様、一般社団法人まちくる仙台様にご出席頂いており両社からの事例を発表頂いたのち、まちくる仙台様からのお題をテーマにワークショップを行い中小企業診断士としてのアイデア出しをしたいと思います。

Intelligence Design様プレゼンテーション

 

Intelligence Design様から会社概要、Mission/Vision、強みについて説明を受けた後、IDEA製品の説明を頂きました。

 

IDEAは最近のトレンドであるプライバシー保護がしっかりとしたAIカメラソリューションです。リアルデータを取得することでいろいろなユースケースへ活用可能です。

こういったAIで収集するデータにおいてもプライバシー保護の観点から、クッキーなどの3rdPartyデータを自由に使えることは日々難しくなってきており、3rdPartyデータを使わずに自らもしくは信頼のおけるセカンドパーティがデータ収集し、解析、利用する方向へ進んできています。

IDEAは自らデータを収集し設置された場所で即時解析し保存を行わないためプライバシーの保護を実現しています。

また、全国規模でスマートシティ構築に貢献しています。

サービスの特徴としては以下の通りです。

仮想のゲートを通った人数をカウントしたり、設定によりある区画の中に滞在している人数をカウントしたりすることができます。

ユーザーのニーズに合わせてダッシュボードを用意しています。

通行量の実態調査だけではなく、セキュリティへの応用などいろいろな使用方法が考えられます。どの方向を人々が見ているか、向いているかなどの解析もすることが出来ます。また、犯罪抑止、広告価値の評価などにも対応可能です。

実際の例についてご覧いただきます。 

 

岡山市の例

商店街の通行量計測をAI化

今まではレポーティングまで時間が掛かる。コストも高い。選ばれた日のみ。

IDEAは365日計測できるので、前年との比較など可能になった。

どのイベントの人流はどうだったかなどの集計も自らできる

名古屋市

展示会場 コロナ感染時の滞在人数カウント

秋田市

新駅整備効果検証

小田急電鉄(民間)、

新宿駅サザンテラス

イルミネーション設置でどう人流が変わるか、日常の人流はどうなのか。

テナントとの賃料交渉などに使える。

阪急阪神不動産

イベント効果を検証

首里石鹸

店舗ごとのスタッフの評価が出来ないか?

ロケーションの良い店舗の売り上げが良いのは当たり前なので人流からお店のポテンシャルを図り、実際の販売員の人事評価に利用

人流・お店の前・入店率評価する

コロナ時にはテント前の人流を計測し、人流が少ない場合は休店とした

入店率(店頭ディスプレイ)の評価も出来る

まちくる 仙台様プレゼンテーション

 

「まちxIT」をキーワードに商店街から仙台のまちの魅力向上を目指す。のタイトルでまちくる仙台の活動をプレゼン頂きました。

仙台市中心部商店街は仙台駅東側の8つの商店振興組合、約800店で構成されています。まちくる仙台は仙台市中心部商店街活性化協議会の運営を支援し、活性化とにぎわいづくりを応援しています。

仙台市中心部商店街は仙台駅周辺の開発により賑わいが駅前へと移り人々に対する吸引力の低下が起こり、これが商店街にとって危機感となっています。

 

そこで令和4年度にBLEセンサーを活用した人流データ収集の実証実験をしました。

 

また、仙台まちテックプロジェクトが発足し人流データや店舗データを組み合わせて入店率売上増加など個店の経営判断・意思決定をサポートする取り組みを始めています。この活動は令和4年度補正「地域新成長産業創出促進事業費補助金 地域デジタルイノベーション実証型」を受けています。

こういった活動の先駆者である三重県伊勢市の「ゑびや大食堂/エビラボ」の視察を行いました。ゑびや大食堂は150年以上の歴史を持つ食堂でDX化をしようという事で店頭にカメラを設置し店の前の人流を計測、その人流を如何にお店に取り込むかをトライアンドエラーで検証しながら進め、10年間で売り上げ5倍を達成しています。勘と経験からDX化とAI最大利益の最大化を目指す活動をやられています。

この活動の中でIntelligence Design様のアプリケーション制度が良いという事で、まちくる仙台もIntelligence Design様に今回お願いしました。

余談になりますが現在中小企業・小規模事業者のデジタル化はかなり遅れていることはご存じのとおりです。エビラボは2016年の段階で下記段階1を飛び越え段階4までやられています。

仙台では商店街にAIカメラを設置し、特定の店舗(ハミングバード)の3店舗にもカメラを設置しました。AIBビーコンも設置し、アプリから属性なども分かるトライアルもしています。

データ利活用のサプライチェーンを、外的要因と内的要因に分けて考えています。一番大事なのは入店率をいかに上げて行くかという事です。人流や他のデータを利用してこの入店率をいかに高めて行くかを取り組んでいます

また、場面に応じて打ち手を考案して行くことが必要で、その取り組みを本日は3つに絞ってご紹介します。

店舗・商店街での入店率を高めるための施策を場面に合わせて紹介します。

①平時の売上UPのための取組

広告手段の適正化。文字ベースから写真メインへ

②イベント時の集客UPの取組 

今回のアカペライベントの取組は昨年より県外からのお客様が多いことが分かっていましたので、イベントから商店街へ行ってもらうためのクーポンを考案。結果として3-4%のクーポンが利用されています。

③商店街の回遊性を上げるための取組

藤崎百貨店における催事と商店街飲食店でのスタンプラリーの取組です。百貨店から商店街への送客とその反対にも取り組みました。こういったいろいろな事をやることでトライアンドエラーを繰り返していくことが必要だと考えており、初めてのトライアルとしては成功と考えています。

先ずは仮説をもって打ち手を考えていますが、実行フェーズにおいては人流データなどのデジタルデータだけでなくチラシなどのアナログな取り組みも必要であると考えています。アンケートの収集などの活動も地道に進めて行くことが必要です。

また勉強会も4回開催しています。勉強会の中では店舗の顧客データや売り上げなどをデジタル化することなどもやっています。こういったデジタルデータがあると、例えば天候の変化などと相関関係が分かってくる。それを機械学習させて予測まで持って行くことが出来れば一番お店にとっても経営判断し易くなってくるのではないかと考えています。

ただしデジタル化はあくまで手段でありお店の売上を上げることとデジタル化は同じではないと考えています。エビラボがシステムでやっているように売上だけではなく、経費もコントロールでき、粗利を最大化することが出来ると良いと考えています。

ここからは出席者によるワークショップです。

ワークショップテーマ

  • 街にもっと集客、回遊させるためにどんなデータ活用が出来そうか?(外部要因の取り込み)
  • 商店街に人が来ても、お店の売上につながらない(お店への誘因策)

 

ワークショップから出た議論

1.リアルタイムで何か判断して出来ないか、買いそうならそこで値引きしてみるとか。個人情報に課題があるが、顔認証でリピーターを判断したい。アプリでポイントたまるとかのサービスが出来るのではないか。ポイントラリー、リピートするとアプリでポイントたまる。

2.どのあたりからの来客なのか、どのポイントで引き返しているか。顔認証をするのであれば参加型でやることは可能か。引き返しているか、その場所で滞留しているかなどは有効に利用できそう。

3.来る人に対してサイネージなど提供(視線、服装を使う、技術はある、何百人も取るのか、一人を追うのか)

4.ターゲット顧客を推定してマーケティング的に狙い撃ちしては如何? 

5.時間帯が面白い 8-9時台、国分町近くは夜人流が増えるので何か出来ないか 時間と属性を組み合わせる考え方が面白い

6.滞在時間を延ばす ベンチを置く 居続けは良いのかどうか

7.お店がマーケティングの知見を持っていることが必要

8.カメラで撮ってほしくない事業者もいる

 

などいろいろな活発な意見が出ました。

 

感想

今回の講演では、稲垣会員からのプレゼンだけではなく、2社からのプレゼンにより現場で実際に何が行われているかよく分かる講演となりました。実際にAIカメラの活用方法がよく分かり、人流などの調査だけではなく、マーケティングにも有効に利用されている実態が理解出来ました。セキュリティなど他にも有効利用できると考えられるため、如何にAIカメラをツールとして有効なアプリケーションを考えて活用して行くかが今後の課題であることも良く理解出来ました。

 

稲垣会員、「AIは地域を救う」のご講演をありがとうございました。