活動報告:2022年5月度定例会

 2021年5月度の定例会は、松尾知明会員による企画で、ゲストに黒澤友貴様(ブランディングテクノロジー執行役員)をお招きして、『マーケティング思考力は鍛えられる!マーケティングトレースのすゝめ』を開催しました。今回もZoomによる開催でしたが、130名を超える多くの会員に参加いただきました。
 黒澤様のプロフィールはこちらです。

 黒澤様は中小・中堅企業向けのマーケティング支援に10年間従事されており、2018年6月より「日本全体のマーケティングリテラシーを底上げする」をミッションに10,000人近くのマーケターが集まる学習コミュニティ「マーケティングトレース」を主宰されました。マーケティング思考力を高めるための学習プログラムを作り、全国でミートアップを開催しています。
著書:「マーケティング思考力トレーニング」 / 「マーケター1年目の教科書」

① マーケティングトレースとは
 黒澤様は入社してから多くの中小企業の社長と会い、対話をしてきました。そこで感じたのは、中小企業にとってマーケティングとは「集客」することに偏った考えを持っていたということでした。もっとマーケティングを「戦略」というレベルで根付かせなければならないと思い、良い戦略を磨くトレーニングができないかと開発したのが、「マーケティングトレース」です。
マーケティングトレースとは、「フレームワークを活用して、成功企業・商品のマーケティング戦略をなぞる(=トレースする)こと」と定義しています。これは、マーケティング思考を鍛える筋トレに当たります。
 フレームワークでは、戦略を構造化するため、①事業環境の理解 ②差別化要素の明確化 ③価値の届け方を決めるというステップを踏みます。それぞれで利用するフレームワークに、PEST分析、5Force分析、STP分析、4P(4C)分析を行って細分化していきます。

 ここから導き出したものを、下のフレームワークにまとめていきます。こうすることによって全体を俯瞰することができ、最後にトレース企業の成功要因を整理し、自分がその企業のCMO(マーケティング責任者)であったらどのような戦略をとるのかの仮説を出すところまで考えていきます。これがマーケティング思考を鍛える筋トレになります。


② マーケティングトレースの方法
 マーケティングトレースを具体的に行う方法として、優れた企業を例に挙げて、先ほどのフレームワークを用いて実際に分析を行うことです。以下の3つのステップを意識して行うことが重要です。

 
 定例会の中では、「星野リゾート」を例に挙げて、実際に黒澤様が行ったマーケティングトレースの例を紹介していただきました。

 このように、フレームを埋めていくことで優れた企業が辿ってきたマーケティング戦略をなぞることができ、思考のレベルアップを図ることができます。ここではさらに、それぞれ行う分析の手法を具体的に紹介いただきました。

1) PEST分析
ポイント:戦略を構築していく上で前提となる世の中の動きを探る
     新しいニーズがどこで生まれるのかのヒントを探る

2) 5Force分析
 ポイント:縦軸 ブランドが所属する業界カテゴリーと競合他社
      横軸 ブランドの儲けの仕組み
 競合には2種類あり、業界競合と価値競合があります。特に価値競合を意識すると新たな戦略が浮かび上がってくる。例えばJALの価値競合になりうるのは、テレビ会議、チャットサービス、VRなど。「移動して人と会う」という価値を奪うものという考えになります。

3) STP分析
ポイント:マーケティング戦略の土台を作る
     価値を届けるターゲットを定め、競合との違いを特定
 重要なのは、ポジショニングを取るときに、業界内のポジションだけではなく、顧客を想起したものになっているかで表すようにすると効果的であります。

4) 4P分析
ポイント:ターゲットにどのように価値を届けるのかを考える
     マーケティング施策の各要素の連動性を理解する

③ マーケティングトレース×中小企業

 中小企業の社長向けには、「ブランディングトレース×簡易マーケティングトレース」から始めるとよいです(講義内では具体的企業が挙がっているので、議事録では伏せさせていただきます)。中小企業の社長さんは、あまり抽象的な分析をされることを苦手とする方も多いので、なるべく具体的な形で世界観→戦略→戦術レベルで分析をしてあげるとよいとのことです。

ブランディングトレースのフレーム

簡易マーケティングトレースのフレーム

 講演の内容は以上です。診断士の試験で学んだ馴染みのあるフレームワークがたくさん出てきましたが、試験用に覚えるだけで、実際に使ってみるという経験は意外と少なかったりするのではないでしょうか。これを機にマーケティングトレースにチャレンジして、マーケティング筋をビシビシと鍛えたくなる、そのような講演でした。
 黒澤様、ありがとうございました。