「建設業支援の専門家による利益が5倍になる経営改善研修」をバルサ合同会社柏村斉会員よりご講演を頂きました。
柏村会員は大学、大学院で土木工学学び、建設業界でエンジニアをなされた後、コンサル業界へ転職され、コンサルをしながら建設業界中小企業支援をされています。
講演内容
「建設業支援の専門家による利益が5倍になる経営改善研修」
~利益の見える化が利益創出の肝
まず、本日の目的とゴールの確認です。
目的:建設業の経営支援に役立つ知識の提供
ゴール:
① 建設業の特徴や用語に慣れる
② 診断士の経営支援のステップを知る
③ 業績管理の方法を理解する
講演を上記の目的とゴールを達成するためのアジェンダとして、本日は以下の3つのアジェンダで説明を頂きました。
- 建設業の特徴
- 診断士の経営改善10ステップ
- 原価管理の手順
建設業界になじみの少ない方に向け1.建設業の特徴を説明頂き、2.改善の10ステップと建設業界でないがしろにされがちな3.原価管理についてご説明を頂きました。
1.建設業界の特徴
1-1 建設業の全業種に対する割合
建設業は全産業の11.5%を占める➡中小企業支援機会も多いので、建設業を理解されると仕事の幅も広がる
1-2 建設業の種類
土木 社会インフラ
建設 建物
建設業界許可業種 29種類
仕事内容を知りたい場合は以下の文献が有用
①建設業界ガイドブック
仕事の流れ
仕事に関与する工事業
各工事業の詳細情報
仕事のやり方
関連する免許
②業種別審査事典
より詳細に工事業が分類されている
(知っトク知識)建設業許可
1.大臣許可と知事許可の違い
二つ以上の都道府県 大臣許可
単一都道府県 知事許可
2. 一般建設業と特定建設業の違い
特定建設業 元受け、4500万以上(建設一式では7000万以上)を下請けに出す
- どちらを取っているかで企業規模が推測できる
1-3 建設業の全業種に対する割合
一括発注
分類発注 発注者が仕事ごとに分けて発注
その会社がどのポジションで仕事をしているのか
BtoB(建設会社とのビジネス)なのかBtoC(会社、官公庁、個人などとの契約)なのかが重要
1-4 建設業の課題
工事の期間が長く、利益が出ているか出ていないかが分からない
価格以外の差別化が評価されにくい
仕様が確定されているため差別化しにくい
労働集約型 天候などに影響を受けやすい
直近の課題
資材高騰
人材不足
2024年問題 時間外労働の上限規制、割増賃金引上げ
新築市場縮小
コロナ融資返済
2.診断士の経営改善10ステップ
PLベースの改善提案の説明です。
4ステップで説明します。
現状分析
問題点整理・ありたい姿
改善策の検討
伴走支援
STEP1現状把握①経営者ヒアリング
経営者ヒアリングを行う点での心構えです。
この中で特に聞くポイントは以下の通りです。
経営者のタイプ(技術者なのか営業上がりなのか事務なのか)
工事種別の割合
収益の計上基準
裏帳簿が有無(金融機関との付き合いやけえ家事項審査などにより裏帳簿がある場合が多い)
(知っトク知識)収益の計上基準
5パターンあるが工事完成基準と工事進行基準が重要
進行基準は計算が大変なので、ちゃんとやっているところは工事完成基準を取っているところが多い。発生主義を取っているところも多く利益が分からず課題が多い。
(知っトク知識)建設業の会計科目
経営者ヒアリングにおいてフレームワークとしてローカルベンチマークの業務フロー、商流を利用している
(知っトク知識)経営事項審査 建設業者の資格審査を行うのに使用されるので良く見せたい。ランク付けされる。
800点を超えていると中小企業としては優秀。完成工事高が占める割合が多く売り上げ至上主義に走る、または粉飾の原因にもなる。
STEP1 現状把握②決算書分析 特に押さえておきたい経営数字
主要統計をみて比較対照すると良い。
STEP1 現状把握 ③工事の原価分析
実行予算書または日報などから工事ごとの粗利を計算する
顧客別、工事別など
STEP1現状把握 ④現場確認
公共工事の場合 工事成績点数評定通知書が届く
施工上の課題が分かるが発注者によって評価の仕方が違うので絶対値ではなく、地域の市役所などで平均点を確認し評価する
工事現場を見て評価する
安全性も確認する
清潔、安全、効率的である現場は良い現場
STEP1現状把握 ⑤従業員ヒアリング
社長以外の目線と社内事情の把握を目的とする
社長以外の社員との信頼関係構築(業務改善する場合は社員との関係性構築)
スタッフ面談シートを作って30分ほど面談する
STEP2 今期の売上・粗利の確認
STEP3 ありたい姿の確認
①「自分の実現したいこと」とその理由「理由」
② 自分の引退後、会社をたたむか、残すか
STEP4 必要売上・粗利の算定
お金のブロックパズル(和仁達也氏)を利用し、経営者と一緒に考える
右から左にさかのぼって必要な粗利・売上を算定
経営者にやってもらうことが重要です。不足額を把握し対策を練る
STEP5 問題点の整理
すべて一覧化する。
内部のみ フラグを立てて見せるか見せないか
問題点の重要度・問題点の分類など記入する
STEP6 対応策の検討
①概要
問題の解決
建設業特有の対応策
②標準粗利率の設定
見積金額設定のため
参考値を目安に・建設業の財務統計指標を参考にする
経営の上手く行ってない会社は粗利ののせ方が少ない会社が多い
職人上がりの社長さんがあまり粗利を載せたらいけないのではないかと思う方が多い
③利益倍増モデル
一般社団法人キャッシュフロー協会の資料を建設業向けにカスタマイズ
ブロックパズルを分解して
呼び水として利用 他社はこういうものを使っているが、使えますかねという風に議論のスターとして使う
自分で仮説は作っておく
中小企業に対しては社長に気づいてもらうことが重要(経営者、社員)
例)多能工化・周辺業務への展開の例
外構工事業に水道工事業を加える
鋼構造物工事業(内製化) 5億から10億売上へ
ダクト工事業 常用契約(人工で契約)から請負契約へ
WEBサイトの活用 大工下請けから元受け工事を増やす(雨戸専門リフォームに特化したWeb作成)
STEP7.8 目標売上・粗利の決定、計画・アクションプランの作成
優先順位の考え方:取り組みやすく効果の出るものを最初に行う
アクションプラン:いつだれが何を行うか決定
STEP9 社員向け研修
ゴール:従業員のモチベ―ションを高める
アクションプランを達成しようと感じてもらう
- 社員向けお金の研修
- 経営目標とアクションプランの説明
- 従業員の方に協力して欲しいこと
STEP10 伴走支援
支援者の役割:進捗管理を支援(建設的な強制力
3 原価管理の手順
中小企業向け
3-1 なぜ原価管理を行うのか?
売上を上げるよりは原価を管理するほうが容易
原価管理:工事契約ごとに原価を計画し、計画と実績を比較管理
利益を把握するため
お金の流れを見える化することで、現状が分かる
現状分かると意識が変わる、
意識が変わると、コストが変わる
3-2 大切な心構え
原価管理は管理会計 脱完璧主義
叱らない 社員の問題ではなく管理体制に問題がある
社員に重要性を認識してもらう
原価管理も仕事の一つ
原価管理以外の3つはやっている。原価管理は後回しになりがち
カレンダーに書き込んで仕事の一部として認識してもらう
3-3 原価管理の手順 ⓪全体像
引き合い~契約 着工~完成・納品と2つに分けて考える。
前半も原価管理としては重要と考えている
① 工事原価の算定
労務費ポイント 施工の段取りをしっかり考える
社員の単価は社員ごとに設定
材料費・外注費・現場諸経費 実費を計上
ポイント:見積もりを2社以上取る
支払いが発生しない費用も忘れずに入れる
少額消耗品は雑費でざっくりいれる
3-3原価管理の手順 ②見積書の作成
粗利が出ない工事は受注禁止
ポイント:端数切りやめる
以前のものを流用しない
値引き前提の場合、値引き後の金額を決めておく
見積もりを作ってからの思考時間こそが重要
変動費が出ない場合は受注してはいけないが結構の企業が受注を取ってしまっている
利益を載せても分からないところは大きく、相場が分かりやすいところは小さい掛け率
数量の増減が発生しても損失にならない様に
(知っトク知識)発注価格の決まり方
3-3原価管理の手順 ③幹部が見積書承認
3-3原価管理の手順 ④実行予算書の作成・承認
施工の段取りを考える
実行予算承認前に工事を着工しない事
工事の懸念点を把握する事
3-3原価管理の手順 ⑤執行状況の入力
予算に対して実績記入
支払い時にも利用 (支払いミスに気付く)
現場で決まった事(工事内容変更)の請求ミスも防ぐ
3-3原価管理の手順 ⑥実行予算の更新
①現場の施行状況を踏まえて、必要に応じて実行予算見直し
②工事一覧表を作成・更新
忘れられない様に定期的に会議を行い、進捗確認する
3-3原価管理の手順 ⑧改善策の実行、成功事例、失敗事例をまとめる
注意事項
改善策の実行、成功事例、失敗事例をまとめる
労務費のデータベース化する
4.まとめ
建設業の種類。請負の流れ、主な課題、専門用語を知って、建設業に対する心理的ハードルを下げよう
経営改善の10ステップ、再現性のある支援を
原価慣例はいいとこづくめ。重要性を知って運用してもらおう
土木インフラの補修・改良・更新のために地域の建設会社が生き延びなければならない
建設業の会社は減少傾向
中小企業の支援を通じて日本のインフラを守りたい
今回の講演では、建設業に疎い方でも良く理解が出来る講演でした。資料もしっかりされておりこの報告書ではカバー出来なかった点も分かりやすく説明を頂きました。建設業の市場は将来の日本でのインフラを支える事業として診断士としてしっかりとサポートをして行くことが必要という意見も素晴らしいと思いました。柏村会員、よく分かる内容の濃いご講演をありがとうございました。