2022年8月の定例会は、ビジネス・ブレークスルー大学教授の斉藤徹先生をお招きして「幸せ視点の経営学~だから僕たちは組織を変えていける/やる気に満ちたやさしい組織をつくる~」というタイトルで講演をしていただきました。
斉藤先生は、大学卒業後に新卒で就職された会社を退職した後、現在に至るまで30年以上、起業家・経営者として活動されています。また、学習院大学やビジネス・ブレークスルー大学の教授を歴任され、経営学を教える私塾「hintゼミ」も主宰されるなど教育者としても活動されています。
最新刊「だから僕たちは、組織を変えていける」(クロスメディア・パブリッシング)をはじめ、多数のご著書もあります。
1 組織を変える目的
講演の最初に、コンピューターが普及した知識社会において、指数関数的に変化する社会にあわせて組織も変化する必要があることを解説していただきました。
変化の方向性として、物中心の組織から人中心の組織、やる気に満ちた優しい組織という組織像をお示しいただき、組織の変化は一人から始めることができ、徐々に影響を与える範囲を広げていくことで組織を変えていくことができることを教えていただきました。
2 やる気に満ちた社員の重要性
日本の組織の現状として、やる気に満ちた社員はわずかに6%しかおらず、世界的に見ても際立って低い数値であることをお示しいただきました。
しかし、組織を支えているのはやる気に満ちた社員であり、やる気に満ちた社員は、満足していない社員と比較して、生産性が3倍も高いことをお示しいただき、組織にとってやる気に満ちた社員がいかに重要であるかを解説していただきました。
3 やる気に満ちた社員を生み出す方法
やる気に満ちた社員を生み出すには、組織のリーダーの影響力が非常に大きいことを解説していただきました。具体的には、リーダーが、結果を追い求めるあまり、組織の統制を強めようとすると、強制が増えて人間関係が悪くなり(①関係性の質の悪化)、メンバーが疑心暗鬼に陥るなど(②思考の質の悪化)して、行動が消極的になり協働も進まず(③行動の質の悪化)、目標としていた結果を得られない(④結果の質の悪化)という失敗循環に陥るとのことでした。
そこで、結果を改善する方法として、最初に結果を追い求めるのではなく、①関係性の質の改善を起点とする方法を御紹介いただきました。具体的には、対話や交流により相互信頼を深めることで(①関係性の質の改善)、メンバーが前向きになり多様な気づきが生まれ(②思考の質の改善)、自律的な行動が増えるなどして(③行動の質の改善)、結果も改善される(④結果の質の改善)という成功循環が生まれやすくなるとのことでした。そして、結果が高まれば、メンバー一人一人の組織への帰属意識や結果を高める意欲が生まれるとのことでした。
4 関係の質を改善する方法
関係の質を改善について、メンバーが、「自然体の自分」をさらけ出せる環境である、「心理的に安全な場(心理的安全性)」を作ることの重要性を解説していただきました。
変化の激しい知識社会においては、チームが斬新なアイデアを出し続けることが重要であり、メンバーが斬新なアイデアを出すための土台となるのが「心理的安全性」であるとのことでした。
心理的安全性を作り出すためにはリーダーの行動が重要であり、リーダーは無意識のうちに心理的安全性を崩す行動しがちであるとのことでした。心理的安全性を崩すリーダーの行動の具体例として、「完璧主義」、「コントロール欲求」、「過度の所属欲求」、「犯人捜しの本能」について解説していただきました。
そして、心理的安全性を創りだすリーダー像として、親しみやすい人、知識の限界を認めること、リーダー自身も良く間違うことを積極的に示すことなどをお示しいただきました。
5 思考の質を改善する方法
思考の質を改善する方法として、リーダーがメンバーに「意味と希望」を伝えることが重要であることを解説していただきました。
リーダーとメンバーが仕事の目的と価値観を一致させることで、メンバーが仕事に対して前向きな意欲を持つことができようになるとのことでした。さらに、仕事自体に面白さを感じることで好奇心をもって熱中し、社員のやる気が高まり、生産性も高まるとのことでした。
リーダーがメンバーの「思考の質」を改善する方法として、メンバーが組織のパーパスやミッションを理解・納得し、自分の仕事とパーパスなどとの関係性を理解・納得することができるように、仕事の「意味と希望」を伝えることが重要であることを解説していただきました。
そして、メンバーが仕事の意味を感じやすくする環境作りの方法として、ジョブ・クラフティングのアプローチを紹介していただきました。
6 まとめ
斉藤先生ご自身のご経験と理論に裏打ちされた大変勉強になるご講演をしていただきました。
一人からでも組織を変えていけるという勇気を与えていただくとともに、実践する際のヒントを沢山与えていただくことができました。
斉藤先生、ありがとうございました。