2021年12月度の定例会は、沢田一茂会員による企画『行動経済学を理解しビジネスに応用する』を開催しました。今回もZoomによる開催でしたが、多くの会員に参加いただきました。
沢田一茂会員は人事制度のコンサルティングとビジネス研修、資格の学校TACで中小企業診断士試験の受験指導など幅広くご活躍されています。本日は「行動経済学の理論を理解して、様々な意思決定やビジネスに応用出来るようにする」ことを目的に、様々なケーススタディを通して行動経済学の内容をわかりやすく教えていただきました。
①行動経済学とは
経済学とは市場取引や政府の政策などを分析する学問です。行動経済学は経済学に心理学を組み合わせた学問になっています。行動経済学は、政策などを実行した際に心理的要因により従来の経済学では想定できなかったケースに対応できる学問といえます。
②リバタリアン・パターナリズム(デフォルト)
<グループワーク:健康プログラムの参加率向上>
参加者からは以下のような意見が出ました。
・強制的にするよりも自主的に活動することを促進する取り組みを行いたい
・ゲーム感覚で楽しめるような取り組み(ゲーミニフィケーション)
・取り組みの参加者に景品などを渡す仕掛け
・業績評価に入れる
・部署単位で参加率を競わせるなど
この事例ではリバタリアン・パターナリズムという考え方が有用です。
リバタリアン・パターナリズムとは選択の余地を残したまま望ましい方向に導くということであり、緩やかな介入を行うことを指します。
制度を見直す際に①強制したほうが良いケース、②自由にさせた方が良いケース、③緩やかな介入をした方が良いケースという観点で検討してみましょう。また、緩やかな介入をする場合には「どのような介入が望ましいのか」という観点が重要です。
<グループワーク:日本の臓器提供対象者を増加させるには>
参加者からは以下のような意見が出ました。
・日本では「提供する」という意思表示をすることに対し、臓器移植の可能性ある提供者が高い国では「提供しない」という意思表示をしなければならない
この事例は「デフォルト(初期設定地・標準値)」の設定の違いによって生じています。
ビジネスのデフォルトを見直すことによって、課題の解決や利益や売上などを高めることにつながります。
③プロスペクト理論
<グループワーク:ボーナスのカット>
参加者からは以下のような意見が出ました。
・会社の売上など下がった指標を提示して、その値よりもボーナス減少率は小さいと示す。
・業界自体が下がっていると示す。
・経営者自身はより大きな割合をカットすることを示す。
この事例では参照基準という考え方があり有用です。
参照基準とは「ものごとを相対評価して評価する際の尺度」のことです。何か厳しい説明が必要な時に、いやらしくない程度に参照基準を活用することが重要です。
その他にもプロスペクト理論については以下の要素があり、それぞれに対してケースを交えてわかりやすく説明いただきました。
④サンクコスト理論
サンクコストとは事業などに投下した資金のうち、事業を撤退・縮小しても 回収できない費用(時間や労力も含む) のことです。下記の点に留意して合理的な判断をする必要があることを事例を通して説明いただきました。
本日は行動経済学について様々な事例を通して説明いただきました。行動経済学は様々なビジネスや意思決定にも活用できる学問とのことですので、講演頂いた内容を活かしていこうと思いました。ご講演いただきありがとうございました。