2018年度7月定例会 活動報告
2018年7月度の定例会についてご報告いたします。
7月度定例会は、岩本亨会員の企画として『失敗企業と成功企業の分岐点~私の再生支援経験より~』と題し、ご自身に講演を行っていただきました。
■会社の経営悪化には共通の原因がある 岩本亨会員
岩本組組長の岩本会員は独立して13年、CRC(企業再建・承継コンサルタント協同組合)を中心に、企業再建に携わった案件数は約60件を超えるとのことです。
再生支援、承継支援の対応としては、基本的にセオリーがあり、それをきちんと遂行するのが大切となります。今回は、再生支援、承継支援のプロマネをしている、染谷勝彦会員、加藤元弘会員、中村守人会員にも15分程度ずつ実体験をお話いただきました。
尚、CRCは基本的に金融機関から紹介を受けた案件を、会社も全金融機関も納得できる計画を策定し、しかも必要があればTAM(ターンアラウンドマネージャー)を送り込んで、一緒になって経営正常化やスムーズな承継を実現してきた協同組合です。
中小企業診断士として再生・承継案件にどのように対処すれば良いか?その基本的な考え方も含めお話いただきました。
■事例Ⅰ 事業譲渡&民事信託スキーム 中村守人会員
2年前に中小企業診断士として独立し、CRCで企業再建、事業承継案件をこれまで9件手掛けたとのことです。今回は、経営者の高齢化、後継ぎの不在、多額の債務超過に陥った企業の事業を、民事信託のスキームを活用し事業譲渡した事例をお話いただきました。民事信託を活用することで、スムーズに事業譲渡できた事例でした。
■事例Ⅱ 本業立て直しによるPL改善 加藤元弘会員
ホテルやレストラン向けに業務用食品を製造・仕入・販売をしている製造業者の事例です。最新の機器を導入したにも関わらず、売上の減少、価格競争による利益の減少、借入れ過多、組織の機能不全等の状況により営業利益ベースでマイナスが出ていました。
CRCは定期的なモニタリングという形で支援に携わりました。しかしながら、1年目は現場が全く動かず、成果が出ずに終わったとのことです。2年目は、各部門のキーマン同士のコミュニケーションを活発にした所、内製化するという共通の方向性に向かって各部門が一体化する動きが出てきたとのことです。その結果、3年目は黒字化が達成できました。
当たり前のことを当たり前に実行すること、コミュニケーションの活性化には粘り強く取り組むことの重要性を再認識した事例だったとのことです。
■事例Ⅲ 温泉旅館の再生支援事例 染谷勝彦会員
バブル崩壊後の景気後退局面を設備投資で乗り越えようとしたが失敗し、再生に向かうも2次破綻した地方の温泉旅館を再生支援した事例です。
TAMを投入し、親子3世代をターゲットにした施策、地元の酒蔵とコラボした利き酒会、高卒の従業員が生き生きと働ける施策等を実施した結果、業績が改善しました。
■事例Ⅳ 地元有力老舗の再生 岩本亨会員
地元で有力な老舗の食品会社でしたが、グループ全体4社とも債務超過に陥っており、赤字体質だったとのことです。実施した施策としては、硬直化してしまった組織に、TAMを2名投入し、経営体質改善を行いました。
経営改善からリーダー育成による組織強化や、利益体質への転換等を約5年かけて支援を行い、黒字化を実現しました。
■まとめ 岩本亨会員
講演のまとめとして、失敗企業の現場からの学びをお話いただきました。
【失敗企業に共通する10コの問題点】
◎あるべき経営判断 ⇔ ×残念な経営判断
① 意思決定の仕方 : ◎話し合いで決める ⇔ ×社長だけで決める
② 判断の根拠 : ◎情報と知識で ⇔ ×過去の経験に頼る
③ 検討方法 : ◎いろんな視点で ⇔ ×偏った視点のみで
④ 事業の進め方 : ◎計画に沿って ⇔ ×目先の利益が出るか
⑤ 見通しの立て方 : ◎最も厳しい予測 ⇔ ×最も甘めの予測
⑥ 対応の特長 : ◎迅速かつ冷静 ⇔ ×不明確
⑦ 経営責任体制 : ◎明確 ⇔ ×不明確
⑧ 重視ポイント : ◎実体重視 ⇔ ×体裁整備
⑨ 情報管理 : ◎細かく注意 ⇔ ×ほとんど考えない
⑩ 専門家の活用 : ◎積極的に意見を聴く ⇔ ×活用しない
【失敗企業にならないために 経営改善のキーワード】
「当たり前のことを、当たり前にやる」
「コンプライアンス(法令順守):ルールを守る」
「きちんと数字で判断する」
「従業員を大切に」
■最後に
中小企業診断士試験に合格したものの、実践のスキルがなかったご自身の体験を振り返りつつ、企業再建・事業承継に携わる意義についてお話いただきました。経営課題を抱え困っている中小企業の経営者がたくさんいる中で、TAM講座等を通じて実践力を学び現場で発揮していくことで、本当の意味で中小企業の経営者の役に立つことができるのではないか、と締めくくりました。