2018年度2月定例会 活動報告

 2018年2月度の定例についてご報告いたします。

 2月度定例会は、研究会「岩本組」の岩本統括幹事の企画として『事例に学ぶ、中小企業の社長はどのような支援を求めているのか?~ここまでやれば中小企業は生き返る!~』と題して、島根県信用保証協会出雲支店の支店長小野拳氏に講演を行っていただきました。

 講演冒頭には、小野氏の職場である島根県のPRが行われ、出雲大社の神話、15年連続日本一の日本庭園である足立美術館の紹介が行われました。島根県は、人口68万人、中小企業23,542社、東京都の5%ほどの市場規模であうことが紹介されました。

 

気がつかされた経営理念の大切さ

 最初に、小野氏の考える経営理念について、お話がありました。

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 多くの経営者が経営理念の価値に懐疑的です。実際、「理念で飯が食えるのか」という質問を何度もされます。経営者は理念を実現するため、商品価格を抑え、社員の福利厚生を充実させることが求められ、結果、利益を圧迫していると考えています。

 安い商品を提供することや、福利厚生を充実させることは、誰もが持っている表面的な要望に過ぎない。この表面的な要望を実現することは、企業理念の実現ではありません。本当の経営理念の実現は、お客様を感動させること。そして、お客様を感動させた従業員が、仕事にやりがいを感じ、幸福度を高められるものです。

 「理念で飯が食えるのか」という経営者の言葉は、当初は理念の実現が目的だったにもかかわらず、いつの間にか企業の継続を目的としてしまったことを示しています。

 私たちは、この話を、経営者に対するメッセージであるとともに、中小企業診断士への訓示として受け止めました。

 

経営理念の浸透を実践している企業の事例

 続いて、経営理念を実践している企業の紹介がありました。

 1社目は、エゴマの栽培と通信販売を行う会社です。社員自ら従業員の幸福向上にとり組むことで、お客様の感謝の言葉にみなで喜べる組織となりました。広告による攻めを一切せず、意識改革によって7年連続増収増益が達成されています。(健幸ファーム いづも農縁)

 2社目は、旅館です。若女将が顧客への質の高い奉仕を実施しています。小野さんは、この企業の経営理念に共感し、設備投資のために破格の借り入れを起こしました。今では、中国地方で非常に高い評価を受ける旅館になりました。社員にもその理念は引き継がれ、入社半年の新入社員であっても、顧客を感動させる接客が実現できています。(白石家)

 3社目は、アパレル製造業です。古い歴史的な染色技術を引き継ぐために自腹で投資をするカリスマ社長が経営をしています。「日本の心を引き継ぐ」という強烈な経営理念があり、社員の共感度が高い会社です。東京の有名な商業施設にも出店しています。(群言堂)

 

支援の事例

 中小企業の支援で、小野氏の部下Aが、1人の経営者との出会いによって仕事に対する姿勢が変わった、という印象深い事例を2件紹介いただきました。

 まず、パン等製造業の事例の紹介がありました。設備投資に失敗し、リスケにも失敗し、4年間孤独に代位弁済をし、返済を続けてきました。経営状況は悪く、社長自身も苦しんでいましたが、無添加にこだわったパンを作り続けていました。それを間近で見て心を打たれた部下Aは、経営の支援をしたいと小野さんに訴えてきました。経営者と若手社員は、二人三脚で経営改善に取り組み、苦境を脱することができました。この経緯は、「金融排除 地銀・信金信組が口を閉ざす不都合な現実 (幻冬舎新書)」に収録されています。

 もう1社は「破綻懸念」先として格付された鮮魚卸業でした。その企業は金融機関2社と付き合いがありましたが、証書貸付は折り返し拒否となり、手形貸付も更改拒絶となり、保証協会として支援することになりました。そこで小野氏は、入社3年目の部下Bに経営改善支援を指示しました。そして、まずはその企業の業務を理解するところから始めました。そうすると①競り→②仕分け→③値入→④市場持ち込み→⑤発送→⑥伝票などの業務フローが見えてくると共に、値入の決め方は感覚的に行っているため赤字が膨らんでいるという課題も見えてきました。そのため小野氏は値入管理を徹底し、資金繰り表の作成という当たり前のことを支持しました。資金繰り表の作成支援と実績確認を行っていき、都度対応策の検討を行っていくことで過去最高の単月利益となりました。「実は資金繰り表を作れる社長は少ないんです。支援して過去最高益となった際に、社長の奥さんは泣いて感動されました。」小野氏にとっても忘れられない出来事になっているようでした。

 

支援機関として企業のためにやるべきこと

 最後に、小野氏より熱いメッセージをいただきました。

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 経営理念を実現することで、社員が顧客幸福を実現する成功体験ができれば、社員幸福も高まります。社員幸福の高まりは、更なる顧客幸福を生むという循環がすすみます。この循環を作り出すことが支援機間の使命であると考えています。

 売り上げは、ありがとう、の数しか上がりません。そして、お客様のありがとうは、人でしか作ることができません。

 今、多くの経営者の方々は仕事が面白くないと感じています。それは、経営を継続するための資金繰りに追われ、多くの経営者の方々は目標が目的化してしまっていることにあります。

 日本の経済を支えているのは孤独な中小企業の経営者です。本気で応援してくれる人、経営者と一緒に戦っている戦友はほとんどいません。支援機関として、こんな方々を助けないでどうするのか、と常々考えています。

経営理念とは「この文言を実践するがゆえに、会社が社会から認められるもの」

 この小野氏の言葉に心を打たれた会場のみなの盛大な拍手で、定例幕は閉じました。

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