2017年5月度の定例会についてご報告いたします。
5月度定例会は、中小企業政策研究会の事業承継研究会の企画として『今さら聞けない! 事業承継入門講座』と題して、染谷会員をはじめ事業承継研究会会員の方々に講演を行っていただきました。
公演は中小企業庁の策定した「事業承継ガイドライン」のポイント紹介から始まり、事業承継の現場での事例紹介と進み、最後に参加者全員で事業承継の中での診断士の役割を考えました。
事業承継ガイドラインのポイント
公演の前半では、事業承継ガイドラインの内容として、事業承継の現状と、事業承継が進まない理由、そしてガイドラインの改訂ポイントが灰田会員、中村会員、小寺会員より紹介されました。
現状としては、社長の高齢化が進行し、会社を引き継ぐ人がいないため同業他社と比べて順調な業績であるにも関わらず廃業を予定している企業が多くあることや、円滑に承継ができれば成長につながる傾向があることが示されました。それでも10年前から事業承継がうまくいかないという課題は変わっておらず、そこには国が施策を打てどもあまり使われていないという現実がありました。また、中小企業を承継する魅力が不足していることも一因と示され、要因が複雑に絡み合った事業承継の難しさを理解する貴重な機会となりました。
今回のガイドライン改訂では、事業承継を進めるためにステップの明確化やツールの整備、支援体制の強化がポイントとして挙げられており、早期に計画、着手をして円滑な承継を促進することの重要さが紹介されました。
支援企業の事例
公演の後半では、中村会員よりアルミ業者の事例をお話いただきました。
思い切って業態変革を行った後に取引先から契約を打ち切られ、苦しい中追い打ちをかけるように社長を病魔が襲う。長男は経営を担えるだけの能力も意思もなく、司令塔がいなくなった企業は迷走してしまった。そこからは、ある程度の年齢になったら、会社の業績問わず承継を考えなくてはいけないという学びがあり、心に留めておくべき内容でした。
診断士の役割について
最後には、診断士のかかわり方を自らで考え、発表する場が設けられました。参加者からは「まず診断先の社長に問題提起をして承継について理解してもらう」、「専門家を招集する役割なのでは」、「後継者の育成に目を向けさせる」、「事業の魅力を向上させる」など様々な視点での意見が出て、診断士の役割について改めて考える良い機会となりました。
「診断士は全体を鳥瞰(高いところから見る)してリードしていく」考え方が承継研より紹介され、講演の後には集まった73名もの参加者から盛大な拍手が沸き起こりました。