2014年10月度の定例会についてご報告致します。
10月の定例会は、PITチーム・チーム岩佐の鈴木秀昭会員が講演致しました。
テーマ:知っておきたい「ニューロマーケティング、神経経済学、ニューロファイナンス」の知識
※ 参考 「ニューロマーケティング」とは?
~脳科学の立場から、消費者の脳の反応を計測することで、「消費者心理」や「行動の仕組み」を解明し、マーケティングに応用しようとする試み
「神経経済学(ニューロエコノミクス)」とは?
~脳科学を経済学の理解に役立てようとする新しい分野。(特に行動経済学の人間の意思決定におけるバイアスなど)
「ニューロファイナンス」とは?
~投資に関する意思決定メカニズムを脳科学の観点から理解・研究し、投資に役立てようとする分野
鈴木氏の講演は、「人が一番幸せを感じるのは、“恋愛”をしている時です。また、“幸せ度”が高い人ほど、スピーチが上手くなります。診断士は人前で話すことが多いので、是非、幸せ(生活の質の主観的満足度が高い状態)になって下さい。」と我々の心をくすぐるエールから始まりました。「脳科学の応用分野」という言葉に少し敷居の高さを感じていましたが、このお話で我々の緊張はすぐに解けました。
「ニューロマーケティング」は、近年、急速に発達している脳科学を応用し、「サービスを科学する」ことで、「顧客のインサイト(洞察)を獲得する」活動です。
そこでは「なぜ、お客さまは大切にされるとうれしいの?」という疑問を脳科学的に調べていくのですが、企業が実際に行っている事例を、著名なグローバル企業から国内企業まで、動画も用いながら具体的にたくさんご紹介頂きました。
また、脳の特徴である「脳は考えるのが嫌い」、「ヒトは簡単に不快になる」ということを、感情が生まれる脳の部位、特徴を踏まえながら脳科学的に説明されました。「ヒトは理性脳(前頭葉など)と情動脳(大脳辺縁系など)を持っていて、6つの感情(怒り、恐れ、嫌悪、驚き、喜び、悲しみ)は、情動脳で生まれる」などのように、専門用語だけでなく平易な言葉も織り交ぜて説明されたので、我々初心者にも大変分かりやすいお話でした。その中で、企業が行う消費者アンケートについて、消費者は脳の答え(真実)と実際の解答はかなり異なる回答をするというお話がありました。我々診断士は、企業診断の中で消費者アンケートを取る場面も多いので、非常に参考になるお話でした。
次に「ニューロファイナンス」として、 日本人が欧米人に比べて、 経済バブルを起こしやすい理由を、脳科学の観点から説明されました。日本人は、相対的に共感度が高いので他人の意見に流されやすく、「他の人はどうするか?」を気にしてしまうため、バブルになりやすいそうです。 また、セロトニンというホルモンが「S型」だと不安になりやすい傾向があり、日本人は「S型」の人が欧米人より多いそうです。当日は、「多次元共感測定尺度質問シート」というテストも行って頂き、自分の共感度を測定することができました。
続いて「神経経済学」について、「行動経済学」との関連性も交えて説明されました。「最後通牒ゲーム」というお金の分配率を変えることで相手が提案を受け入れるかどうかを試すゲームを通じて、人間が非合理的な行動をとることを実感できました。脳の「島皮質」という部位の反応が、ヒトの不合理な判断の原因となり、その反応の強さによって、提案を拒否する傾向が変わるそうです。
最後に、ブランドの観点についてもお話頂きました。ブランド信仰と宗教心は、脳の中では近いものだそうです。スーパーブランド(Appleなど)のことを考えている時と、信仰している宗教のことを考えている時では、脳が同じ反応を示すことを動画も視聴しながら説明頂きました。また、著名な宗教に共通する特徴と、高いブランドロイヤルティを獲得している企業の特徴は合致するそうです。
当日は、コンテンツの魅力だけでなく、豊富な動画や鈴木氏の企業人としての経験話、ゲーム体験など盛り沢山の内容で非常に楽しく有意義な時間となりました。これから益々の発展が見込まれている「ニューロビジネス」の貴重なお話をお聞きすることができ、今後の診断士活動に大いに活用できる講演でした。